2020年1〜3月上旬までに見た映画の感想まとめ

    コロナウイルスがどうので「不要不急の外出は控えてください」と言われているこのご時世、皆さまはどうお過ごしでしょうか?

    私もつい先日親から「映画見に行くのは控えろ」と言われたばかりで、「そんなのやってられるかよ!!」という気持ちに満ちております。

    しかし実際のところ、近日公開予定の作品は軒並み公開延期の憂き目(もちろん妥当な政策だとはわかってはいますが)にあっており、映画館自ら「来るな」と訴えているような気がするのも確か。

    というわけで、今後しばらくは映画を見に行くのは仕方なく極力抑えようと思っています。

 

    その前に、しばらくの間書き溜めていた映画鑑賞の感想をここで一気に放出したいと思います。

 

  年が明けてから、映画の感想を語るということがなかったのですが、少なくとも決して何も見に行っていなかったわけではありません。むしろ結構見に行ってました。感想を書いていないだけです。

 

    2020年になってから、非常にレベルの高い新作がたくさん公開されたと思います。アカデミー賞ノミネート作品が次々と日本に上陸してきたこともあり、この2ヶ月は非常に濃いものでした。

    当のアカデミー賞も激しい戦いが繰り広げられ、個人的にはその話題だけでこの2ヶ月生きてきたような感じです。

  結果はご存知の通り『パラサイト 半地下の家族』が作品賞・監督賞・脚本賞・国際長編映画賞を受賞、しかも外国語映画初のアカデミー作品賞受賞という歴史的快挙によって幕を閉じました。しかし、ポン・ジュノ監督がスピーチで「できることならこれ(監督賞のオスカー像)を五つにわけたいくらいだ」と言ったように、候補となった作品はどれも極めて素晴らしい作品ばかり。

     例年なら「本命級」と称されるであろうほどの魅力を持った作品が一年のうちにこれでもかと多数世に放たれた、そしてそれらが一つの時期に集中して日本にやってきた、そんなイメージでした。

 

     以下、鑑賞順に感想を書いていきます。ネタバレは控えめです。

  1. パラサイト 半地下の家族
  2. ジョジョ・ラビット
  3. 1917 命をかけた伝令
  4. 野生の呼び声
  5. スキャンダル
  6. ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密

  n.???

 

1.パラサイト 半地下の家族

鑑賞日・1月20日

 2020年一番最初に見たのがこの映画でした。

 2019年の時点で、個人的に本作は見なければならないと思っていました。とりあえずアカデミー賞授賞式までになんとか見れてよかったです。

 なにせパルムドールを獲ったというだけで話題性は十分。とある劇場ではエレベーターの扉一面に広告が貼られていたりなど、注目度は非常に高く、また思わせぶりなポスターのビジュアルも相まってヤバい作品のオーラ(もちろんいい意味で)が溢れていました。

 

  しかし、韓国映画を見るのは初めてで、不安や懸念が少々あったのは事実。恐る恐るといった感じで鑑賞しました。

 

 そして、実際見てみたときの衝撃は忘れ難いものでした。

 膨張抜きで全く先の読めない展開で、見ている最中は物語がグッドエンドな方向に転ぶのかバットエンドな方向に転ぶのか予想できず、中盤からの怒涛の展開に恐れ慄いたものです。

 一見コメディ的な展開でこのまま愉快に話が進んでいくのかと思えば、ホラーやスリラーのような恐怖を感じるような空気になったりなど、一言ではまとめられない作品ジャンルの多様さもさることながら、「半地下」や「高台の豪邸」、そしてとあるもう一つの立場を絡めて描かれる生々しい格差の物語が本作の魅力だったと思います。

 

 格差を演出する表現として印象に残ったのが、とある「自然環境事象による」表現。

 その事象により、「半地下」と「高台の豪邸」に存在する覆せない差を見せつけられます。非常に現実的で、これが決して空想ではない、韓国社会に存在する問題であることを嫌でも思い知らされました。

 

 キャスト陣も注目。韓国を代表する名優ソン・ガンホ氏演じるキム・ギテクは、中盤以降において「とある人物」の「とある台詞」と「とある行動」に対した表情が見事。表情一つでキャラクターの内面を理解できてしまう。なぜ彼が「唐突なあの行動」をとったのかが自然と伝わってきます。

 また、キャストの中では長女のギジョン役を演じたパク・ソダム女史が注目されている模様。ぶっちゃけ魅了されてしまった。非常に美しい。

 

 映画的な面白さ、物語のテーマ、監督のメッセージ、いずれも高水準で共存しており、まさしくパルムドール、そしてアカデミー作品賞にふさわしい作品でしょう。

 

 兎にも角にも衝撃が大きすぎて、しばらく放心状態のようなことになったのも今となってはいい思い出。

 

2.ジョジョ・ラビット

鑑賞日・1月22日

 あまりにも衝撃的だった『パラサイト』により、私の精神は結構追いやられていました。

 見終わってからというものの、とにかく「ヤバいヤバい」としか言えなくなったような状態で、はたしてこんな状態で他の映画なんか見てられるのだろうか?と本気で心配する羽目になったものです。 

 しかし作品賞ノミネートの映画を全部見るという目標はまだ途中。こんなところでくじけるわけにはいかない、というところで、次に矛先を向けたのが本作でした。

 

 巷によると、本作は「2020年最高の愛され映画」という評判だそうで(2020年始まってまだ1ヶ月も経ってなかったのに)、もしそうだとしたらこの映画はきっと俺のこの傷ついた心を癒すオアシスとなってくれるだろう、などという訳の分からない期待を持って見に行きました。

 

 本作の舞台は、第二次世界大戦中のドイツ。熱狂的なナチズム信仰者である少年ジョジョが主人公です。そこにユダヤ人の少女をからめ、子供の視点から戦時中のドイツを描く、というお話。

 

 一応戦争映画の部類にはなるのですが、本作には殺伐とした雰囲気はなくユーモアが溢れています。その象徴とも言うべき存在が、ジョジョの空想の友達、アドルフタイカ・ワイティティ監督自ら演じているこのキャラクターは実に面白おかしいものです。

 少年であるジョジョの空想ということで、ヒトラーを模した彼も精神年齢は幼い。作中の至る所でジョジョハイルヒトラーさせ、いかにもナチス的な助言をジョジョに与えます。

 彼らの会話は非常に愉快ですが、一方で幼い少年すら毒されてしまうヒトラーのカリスマ性、そしてその思想の恐ろしさが垣間見えます。

 冒頭のビートルズの曲に合わせて映されるドイツの熱狂の様子など、本作には同時のドイツへの皮肉が描かれており、ジャンルをあえていうならブラックコメディというところでしょうか。

 

 皮肉であると同時に、本作は「反戦」というテーマも存在します。

 ここで核になるのが、ジョジョの家に匿われていたユダヤ人の少女・エルサ。ご存知のとおり、当時ユダヤ人はナチス・ドイツにより迫害されており、ドイツにいるというのは滅茶苦茶危なっかしいこと。

 エルサはジョジョの母親によって匿われており、壁の向こうに隠されていたのですが、偶然ジョジョに見つかってしまう...。

 根っからナチス思想に染まった少年と、ナチスに追われるユダヤ人少女。この最悪の組み合わせはなにをもたらすのか。ジョジョは「敵」である彼女にどう向き合うのか。

 ユーモアな世界観でありながら、ジョジョには様々な過酷な出来事が襲い掛かります。それを通じて、ジョジョナチス信仰者から変化していく...という物語です。...ネタバレのような気もするけどまあいいか。

 

 もう一つ注目したいのが、スカヨハことスカーレット・ヨハンソン演じるジョジョの母親。あんな息子を持っておきながら、実は反ナチスレジスタンス。

 彼女はとても力強く、勇敢。彼女の存在と「とある出来事」もまたジョジョの変化に影響を与えます。スカヨハの演技は一見の価値あり(ちなみにアカデミー賞では助演女優賞ノミネート)。

 

 本作に込められた「反戦」というテーマは、先述したドイツへの皮肉と、ドイツ人とユダヤ人の交流によって、「戦争はおかしいところだらけだ」というような形で描かれています。

 ナチズムを正しいと信じて疑わない少年は、敗れゆくドイツを見てどう思うか。ユダヤ人は迫害すべき存在なのか。そして、その後の世界で、彼はどう生きていくのか。

 面白おかしく描かれていても、戦争は酷いものである。間違いだらけで、絶対におかしい。そんな思いが伝わってきます。

 

 本作が「愛され映画」と言われる所以が、ジョジョ可愛らしさ。幼い男の子であるジョジョが主人公なので当然彼が中心になるわけですが、とにかく可愛い。それしか言えない。

 ジョジョを演じたローマン・グリフィン・デイヴィス君は、本作のオーディションを受けた時点でわずか11歳。それでいて演技は非常に上手く、本国では天才子役として注目を浴びているとのこと。

 ジョジョの友達・ヨーキーもまた本作の清涼剤。ショタコンの気がある人は発狂することこの上なし。

 エルサを演じたトーマシン・マッケンジー女史も注目。彼女が私と同い年だと知ったときは、世界の広さを感じざるを得ませんでした。

 

 明るいテイストながら、戦争の不純さを根底に刻み込んでおり、見た目以上に深い作品でした。

 キャスト陣のおかげで暗いムードになることもなく、戦争映画でありながら気を楽にしてみることができる。それでいて「反戦」のテーマがしっかりと伝わってくる。そしてやっぱり可愛い。

 イレギュラーながら戦争映画の一つの形としては十分アリ。満足できる作品でした。無事心も癒されました。

 

3.1917 命をかけた伝令

鑑賞日・2月19日

 アカデミー賞授賞式直後に日本公開された作品です。授賞式以前では本作が作品賞最有力とされていました。

 全編ワンカット風撮影やリアルな戦場の描写で話題になっており、「スクリーンで見るべき映画」という評価もされていたことから、期待値は非常に高いものでした。結果的に『パラサイト』に敗れたものの、スルーする理由はありませんでした。

 

 時は第一次世界大戦。イギリス軍の兵士であるトムとウィルの二人は、エリンモア将軍からあるミッションを与えられます。それは、前線にいるイギリス兵の進撃を止めろ、というもの。前線ではドイツ軍が後退しイギリスとしてはチャンスであったものの、実際はドイツ軍による戦略的なものであったことが発覚。このまま進撃してしまえば、前線の兵士は壊滅的な被害を受けることになる...。

 一つの伝令を伝えるため、トムとウィルは危険に満ちた戦場を駆け抜ける。

 

 先述の通り、本作の最大の魅力は「全編ワンカット風撮影」による圧倒的な臨場感。戦場を駆ける二人を途切れず撮影し、カメラを通じて見ている観客自身もまるで戦場にいるかのように思わせる映像作りは見事。

 その戦場のクオリティもまた高く、そこかしこに配置されたエグい死体がおぞましさを際立たせています。

 物語の展開は二転三転。静かさと激しさが交互に襲いかかり、一切の油断も許されない状況が続きます。突然どこかから銃撃というのは日常茶飯事。戦場は怖い。

 

 なにより、彼らの旅路が非常に恐ろしい。特にドイツ軍が拠点としていた場所を通るシーンはハラハラという言葉すら生温い。もしかしたらどこかに伏兵が、そうでなくともトラップがあるかも...1秒先も読めないなか、観客は単一のカメラからの目線という不安定な視覚情報を強いられる。ホラーゲームより怖い。

 

 そんな戦地を生きて駆け抜けるということがどれだけ難しいことかを嫌というほど思い知らされます。もし人と出会うことがあったら、だいたい敵兵。捕捉されたら確実に撃ってくる。命の危険が常に付き纏うことの恐ろしさとすさまじい不安がスクリーン越しの観客を包み込みます。いつ死んでもおかしくない状況が繰り広げられ、緊張感は常にMAX。

 

 一応ネタバレは防ぐスタイルなので伏せますが、終盤はそれまでのシーンを上回るスリルが待ち受けます。命の保証がない戦場を突き抜け、はたして彼らは伝令を伝えることができるのか?是非IMAXでご覧ください。これぞまさしく、スクリーンでみるべき映画です。

 

 またキャストは豪華英国俳優陣でお送りします。脇役だけどコリン・ファースベネディクト・カンバーバッチもいるよ。そこだけでも大注目。

 

 ただただ、その圧倒的な臨場感に呑まれる映画でした。最高級のハラハラドキドキを味わうことができます。「21世期最高の戦争映画」「プライベート・ライアン以来の戦争映画の傑作」という評価は伊達じゃない。

 『パラサイト』と一緒の年じゃなかったら絶対作品賞獲ってたと思ってやまない今日この頃。

 

4.野生の呼び声

鑑賞日・2月28日

 我らが大スター、ハリソン・フォード主演ということで大々的に宣伝されていた作品。

 アメリカで有名な小説の6度目の映画化ということらしいですが、不思議とそれまでの5本は一切見たことがありませんでした。日本人だったらそっちのほうが当たり前か。

 

 本作の主人公はフォード演じるハンサムおじいちゃん...ではなく、CGで描かれた犬。事前情報無しだったのでだいぶ肩透かしを食らった印象です。

 フォード自体の出番は少ない...かと思いきや後半は出ずっぱりなので期待外れということはありませんでした。

 

 物語は、主人公の犬─バックが様々な経験を通じて野生に目覚める...というもの。犬が主人公ということで実質セリフなしで主人公を追っていくことになりますが、そこはハイレベルCGにより巧みな表情変化や仕草で魅せてくれます。

 バックはもともと飼い犬だったのですが、さらわれてしまい、ソリ犬として働かされてしまいます。

 

 最初は嫌々働かされていたバックですが、だんだん仲間と打ち解けていき、次第に優秀な犬としてリーダーシップを発揮するまでになります。そんな華々しい活躍を見せた...にも関わらず、突然ソリ犬たちは解散・売却を課せられてしまい、今度はうざったい人たちに荷物運び係として買われてしまう。ここまできて、そこまでちょこちょこ出てきてきた程度(あとナレーション)のフォードがやっと本筋に絡んできます。

 

 フォードが出てきてからは立派な大冒険に。金が埋まっている川を目指す旅が始まるのです。

 

 ネタバレ防止のためストーリーを追うのはここまで。

 感想をまとめると、「特別記憶に残るというわけではないだろうけど、決して悪くはない映画」といったところでしょうか。

 惜しくも他の映画のインパクトが強すぎてどうにも負けている感が強かったです。悪くはないんだけどなぁ...。

 強いて言えば、犬好きの方ならオススメできる、ですかね。私は残念ながら犬嫌いだったからそこまで印象に残すことができなかったのかもしれませんが、犬たちのCGはクオリティが高く、ソリを引いて高速で駆け抜けるシーンは楽しいので犬が好きならきっと気にいるはず。

 「必見」というほどではありませんが、「一見の価値あり」とは言えるので、興味のある方は是非

 あとフォードは年とってもやっぱりハンサム。とはいえ本作を見て「インディ5イケるな」と思うかは貴方次第。

 

5.スキャンダル

鑑賞日・3月1日

 ハリウッド三代女優共演という宣伝文句が印象的だった本作。なんであろうとマーゴット・ロビーが出てるなら見に行くしかねぇだろ畜生という気持ちでコロナがどーのでうるさくなってる中、意地でも鑑賞。

 

 実際にあったFOXのセクハラ告発問題を題材にしたという本作。

 FOXといえばアメリカでも大手のTV局。その社内では、CEOにより女性キャスターに対してセクハラが行われていた...とのこと。

 

 セクハラ被害というのは声を大にして訴えることが難しい。自身がセクハラを受けたことの告白は「自分は汚された」という主張となり、負のレッテルを貼られるかもしれないから。それも女性キャスターという公に出る職業な以上、汚名ばかりが広まってしまうかもしれない。その点に関する女性の葛藤が足を引っ張っている...と勝手に自己解釈。

 女性キャスターとしても、胸にパッドを入れたり、脚や胸元を強調した服装でテレビに映る。これらの現実は、社会が男性優位な状況であることを生々しく描いている。本来ニュース原稿読むだけなのに色気は必要ないはずでしょ?ということ。

 

 男性優位な社会の中、女性たちが奮闘するには男性の権力者に気に入られなければならない。そのために、耐えがたい屈辱を味わっていたのだ、というメッセージが伝わってきます。

 その屈辱を世に知らしめたのがこの告発。誰もが思ってもいなかったところで苦しんでいる人たちがたくさんいたのだ、という訴え。

 

 現実でこんな下衆な行為が行われていただなんて信じたくもないと思いましたが、先述のとおり実話。

    本作でいうCEO─ロジャーのような人間は確実に現代社会に存在しています。権力者のもと、屈辱と名声を秤にかけて必死に仕事を手に入れようとする女性が存在してしまうというのが、いかに悲しいことかを思い知らされました。

 

 ...なーんか感想が薄いな、という気がします。というのも、実際のところ難しかったというのが第一です。

 話のテンポが早く、ついていくのに必死でした。なによりやっぱりある程度事前情報ないといけなかったかもしれない、と思いました。しかし、日本人にとってこの事件は残念ながら遠い海の向こうの存在、あれよあれよという間に話が過ぎていく...

    結局よくわからないまま終わってしまったという印象になってしまいました。改めて自分の理解力のなさを恨みます。

 とはいえ、本作の伝えたかったであろうメッセージはなんとなくだけど汲み取れた気がします。あくまで気がするだけ。

 一応ある程度の知識をつけてから見に行ったほうがいいと思います。なんか去年ワンハリでも同じこと言ってた気がする。

 女優陣は宣伝どおり魅力たっぷり。それも日本のカズ・ヒロ氏による完璧なメイクにより、実在の人物に限りなく近づいていたとのこと。残念だけど知識ないからよくわかんない。

 そして当初の目的であるマーゴット・ロビーは、唯一直接的な描写でセクハラを受けたこともあり、彼女の抱える葛藤が「汚れている」などのセリフ等節々から嫌というほど伝わり、素晴らしいものでした。

 以上です。やっぱり薄い。

 

6.ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密

鑑賞日・3月8日

 時はコロナ真っ盛り、場所はどう考えても危なすぎるであろう大阪難波

 気づけばうちの最寄りの劇場ではどこも本作の上映は終了しており、わざわざ大阪まで出向いてしまいました。

 この直前、『007 No Time to Die』がまさかの7ヶ月延期という衝撃的すぎるニュースが入り込み、ダニエル・クレイグのボンド卒業作はしばらくお預け、という事態が発生。

 その悲しみを少しでも埋めるため、クレイグが主演となっている本作を今更ながら鑑賞することを決めたのです。

 

 しかし、監督はあの『最後のジェダイ』で悪名高いライアン・ジョンソンいつまでネチネチ言ってるんだといい加減突っ込まれそうですが、それだけあの映画が大っ嫌いだった身としては、簡単には期待できたものではありませんでした。めんどくさいな俺。

 

 物語は殺人事件の謎解きを描いたストレートなミステリー物。

 小説家のハーランが誕生日パーティーの翌日喉を切られて死亡しているのが発見され、一見自殺として認定されるものの、謎の人物による依頼状が名探偵のブランのもとに届き、調査が始まる。

 ハーランは家族らとうまくやれていなかったらしく、殺害方法はともかく誰が殺ったとしてもおかしくないような状況。

 

 ...ネタバレ防止の前提でいくと、ストーリーに関してはここまでしか語れません。

 その後の展開が衝撃的なものばかり続き、どこから語っても面白さを削ぐかもしれないと思ったからです。

 裏を返せば、初見であればそれだけ予想外のストーリーを楽しめる、ということでもあります。

 なんだかライアン・ジョンソンってやっぱりこういうことをする監督なんだなーって思いました。今回は流石に面白かったです。

 兎にも角にもネタバレ厳禁。とにかく二転三転するストーリーを楽しめますので、是非事前情報一切なしで見てください。

 

 肝心のクレイグ演じる名探偵ですが、なんともクセになる。

 物語の痛快さに合わせ、彼が真相を暴いていくのは本当に気持ちがいい。謎を追求する姿も、ドーナツのようにぽっかり空いているだのといった面白い言い回しがグッド。早くも続編が製作予定だそうですが、もっとこの探偵の活躍を見てみたいと素直に思えました。

 

 語ってしまえばあらゆることがネタバレになるので本作の感想はこれでおしまいです。上映劇場が減ってきているので見に行く機会は少ないと思いますが、いずれ出るレンタルDVDを待ってでも見る価値はあると思います。ただ、見るまでは絶対に話の内容を追求しないようにしてください。

 

 

 

 以上、2020年に入ってから見た映画の感想でした。

 長文失礼しました。

 

 

 

 ...なにかが足りない気がする。

 でも思い出したくもないような気もする。

 見たことすら思い出したくもないような映画、そういえば一本見てしまっていたような...

 

n.CATS

鑑賞日・1月29日

 というわけで今回のトリです。

 全世界で絶不評の嵐を巻き起こし、レビューサイトでも軒並み低評価を食らった超問題作。

 あの『レ・ミゼラブル』で世界中を感動させたトム・フーパー監督の次なるミュージカル映画ということで、期待は非常に高かったのですが...

 

    実際、公開されるまでは本当に楽しみにしていました。

 ミュージカルのド定番であるあの『キャッツ』がついに映画化するということで、フーパー監督はどんなミラクルを見せてくれるのか、と期待に胸を膨らませていました。

 

 しかし、事態は一転します。

 本国アメリカで日本より一足早く公開されたものの、評価はよろしくない...を突き抜けて大バッシング大会。

 やれ「今世紀最大の災害」だの「人間には早過ぎた」だの無茶苦茶な言いよう。興収的にも大ゴケしたらしく(これはスターウォーズと合わせたのがいけない)、とてつもない不安を抱くことになりました。

 

 そうして去年の期待はどこへやら見る気も次第に失せてきた年明け。不評であることを散々語ったのにも関わらず「見に行きたい」という友人についていき、結局鑑賞してしまいました。

 まあ、やはりというか、いざ終わってみるとその友人とはその後キャッツについて話すことはほとんどなく、話題の中心は「次はなにを見に行くか」ということでした。酷い。

 

 実際何を語ればいいのやら。

 ミュージカルの内容をおそらくバカ正直に映画に落とし込んだだけなストーリー(ちなみにキャッツは公演によってそれぞれストーリーに違いがあるとのことで、必ずしもどれかの公演内容と一致しているわけではない模様)。

 割と耐性付いてた気はしたけどやっぱり不気味なビジュアル。人面猫。極め付けはGとかも一緒に人面化したこと。

 その気持ち悪さを最大限に活かしてしまったカメラワーク。

 本当に悪いところしか挙げられない。

 

 まず内容についてですが、キャッツ自体間違いなく映画には向いていませんでした。

 キャッツにストーリーはないようなもので、ただただ猫たちがパフォーマンスで自己紹介していくだけ。起伏なんてありゃしない。

 実際のところ、本家のミュージカルそのものだって賛否両論だったりしてるのだからこれを映画という形で受け入れさせるのは難しいことこの上なし。名作と長らく語られてはきましたが、今回の映画化でやっぱり一般の人はキャッツのストーリーをよく知らないのだということを改めて知りました。

 

 次にビジュアル。実際のところ、予告編を見ていくうちに慣れていったのでなんとかなった気がしていたのですが、スクリーンとのアンマッチまでは想像できませんでした。

 ボディラインは見事に人間そのもので、毛深い皮に覆われているだけのように見えます。というかなぜ胸を膨らませる。尻を突き出す。中途半端に人間っぽくした姿はどうも気色が悪く、流石に評価はできません。一番問題なのはで、まるで取ってつけたかのように人間の顔を当てはめたかのようで気持ち悪い出来に。何度も言うけど人面猫。

 んでもってその猫たちをカメラはドアップにして追いかける。気色悪さを視界いっぱいに味わうことになる。私たちはなにを見せられているのだろう。

 

 最大に解せぬ点は、Gの人面化。

 なぜあれを人間化したのか。なぜゾロゾロさせたのか。極め付けになぜ食われるところまでしっかり映したのか。ポップコーン買わずに見てよかった。

 

 はてさて、見た目の時点でダークマターのような出来で、それもストーリーなんてあってないようなもので進んでいくのですが...

 

   ...途中で寝落ちしました。

 映画鑑賞好きな人間としてあるまじき行為をしてしまいましたが、ぶっちゃけ後悔はしてません。

 いつまで経っても話は変わらず、パフォーマンスが綺麗だとか思う余地もなく。なんともいえないまま2時間を過ごしてしまいました。

 ただ、起きたタイミングでちょうどメモリーが流れてたのはいい思い出。歌声は普通に綺麗だったわけですし。

 

 本当に、なんといえばよかったのでしょうか。

 淡い期待を抱いていた去年の自分はどこへやら、しかとその目に駄作として焼き付けてしまい、長らくの間見たことさえ本当に忘れてしまっていたくらいです。

 

 ミュージカル版を初めて見たとき、少なくともこんな落胆した感情はありませんでした。

 確かに素晴らしかったのです。美しいと本気で思いました。

 なのに、なぜこの映画には共感できないのか。

 2020年は、このよくわからないモヤを明かすために費やすことになるかもしれません。いや、やっぱりどーでもいい。

 

 ...以上で、この記事は本当におしまいです。

 ありがとうございました。