映画感想 アナと雪の女王2
前作「アナと雪の女王」が社会現象レベルの大ヒットを叩き出してからはや5年。今でも、当時のことは昨日のことのように思い出せます。
日本中誰もが「♪ありの〜ままの〜」と口ずさみ、テレビをつければMay J.が「♪ありの〜ままの〜」と歌唱する姿を飽きるほど目にしました。カラオケでもしょっちゅう誰かが日本語版ではなく言語版で挑んでは滅茶苦茶な音程と歌詞になってしまい撃沈したのを見てきました。日本人が洋楽歌うのは無理。
そんな中、あまりにも流行り過ぎていたということが原因で、なぜか自分はその波に乗れず遠ざかってしまっていました。多分誰もが一度は経験するやつです。つーか単純に聞き飽きてた。
公開後しばらくして、ようやく自分にもこの映画の本編を見る機会が訪れました。親の知り合いが、本作のDVDをウチに貸し出してくれたとのことでした。そんなわけで、波に乗り切れない中途半端な気持ちのまま、期待値ちょっと低めで本作を初めて鑑賞したのです。ここにきて、そういやレリゴーばっかり耳にしてたけど肝心の本編の内容の話題ってなにも聞いたことねぇなということに気づきます。
果たしてそれはぶっちゃけ内容は大したことないからなのか、そう思ってしまいさらに期待値ダウン。しかしいざ鑑賞してみるとビックリ...
重い、いや思った以上に話が重い!!
生まれつき持っていた魔法で妹を傷つけてしまい、扉を閉めて彼女を遠ざけ、心も閉ざしていたエルサと、姉が魔法を持っている記憶を消されて魔法の存在を知らずに育ち、姉に構ってもらえない寂しい日々を過ごしたアナ、といった二人の主人公、そしてエルサの魔法の謎を解明すべく旅にでるものの死亡した、彼女たちの両親...
開始数分から、如何に自分がこの作品を舐めていたかを思い知らされました。
極め付けは、瀕死でぶっ倒れたプリンセスを救う「真実の愛」はイケメンな王子様のキスという実に『眠れる森の美女』的なもの...かと思ったらその王子様がヴィランで、アナを救った愛とは「姉妹の愛」、すなわち「家族の愛」という、ディズニーでも特に異端な内容。つってもその『眠れる森の美女』だってリメイク版の『マレフィセント』で似たようなことやってたけど。
特に心に残ったのが、オラフの「愛するっていうのは自分よりもその人のことを大切に思えること」というセリフ。家族愛は時として盲目な恋愛よりも深いものであることを思い知らされました。
当時中学生だった自分自身、単純なロマンスに飽き飽きしてた中でこのような物語を見せつけられ、それはもう感動というか関心というか。期待値の低さから一転、ぶっちゃけ遅すぎる感もありましたが見事ハマってしまったものです。思えば、『ゴッドファーザー』などが好きな自分にとって、家族愛という要素には弱いことがよく分かる。
翌年、修学旅行にてとしまえん内のゲーセンで千数百円使ってまでオラフのぬいぐるみを獲りにかかったのはいい思い出。
そんなわけで、「アナ雪2」は制作決定が決まってからずいぶんと長い間楽しみに待っていた作品でした。とはいえリバーサルも長かったせいで今年に入るまで忘れてたのも事実。
劇場にて本作の予告を目にしたときは「ようやく来たか」と期待に胸を膨らませたものです。
長すぎる前置きも終わり、ここからようやく「アナと雪の女王2』の感想です。ネタバレは珍しく出来る限り抑えてます。
公式による本作の宣伝文句は「なぜ、エルサに力は与えられたのか─」。前作にて両親の死亡によりあやふやにされてしまった点が明らかになります。一方で「じゃあ逆にアナが一般人な理由は?」という疑問点も解決し(というかアナにもとある課題が課されていた)、前作の伏線回収はバッチリ。
続投のお馴染みメンバーはもちろん、新キャラクター達もそれぞれ上手く物語に絡んできます。
・エルサ
元引きこもりでなんだかんだいって構ってちゃんな姉。不思議な歌声に導かれ、「冒険にはもううんざりしてる」と言いながらも未知の旅へ踏み出す。
今作ではついに謎が明かされることもあり、主要なスポットは基本彼女。アナよりも歌ってる曲数が多い(前作は曲数だけならアナの方が多かった)。
アナとは「もう隠し事はしない」という約束をするものの、危険に晒したくないからかやはり今回も遠ざけてしまう。
・アナ
とにかく明るい、アクティブな妹。
相変わらず一人で問題を抱えようとするエルサを支えるため、共に冒険へと向かう。同時に、自身に与えられた使命を知ることとなる。
中盤にて、これまでになかった恐怖と不安が彼女を襲う。
個人的な感想としては、彼女の吹き替えを担当した神田沙也加女史の演技が素晴らしかった。前作以降複数のアニメやゲームで声優を務め更にレベルを上げていたこともあり、抑揚とテンポの難易度が高いアナを演じ切った。特にソロ曲となる『わたしにできること』はアナの感情の織り交ぜ方も絶妙で本職顔負け。
・クリストフ
勇敢な心を持つ山男。
アナへのプロポーズを計画するものの、迂闊な言葉選びや計画の甘さからか機会を逃し続けてしまう。その悲しみにより、ついにソロ曲が誕生した。
前作と打って変わって、物語への直接的な活躍はかなり減っており、一貫してアナへの想いに揺れ続ける姿が描かれる。
・オラフ
ハグ大好きなマスコット的雪だるま。
ご存知の通り、某不祥事により吹き替えの声優が変更されているが、違和感は薄いどころかむしろ良くなっているとも。
おとぼけボイスとイケボの切り替わりは前作よりさらに激しくなっている。こちらもソロ曲が登場。
「水は記憶を持つ」というセリフは本作において非常に重要となる。
ぶっちゃけ「アナ雪2」はオラフに惚れる映画。
・スヴェン
クリストフの相棒のトナカイ。
アナへのプロポーズを狙うクリストフをサポートする。
ついに同類のトナカイが複数登場、そして中盤には驚きの展開を見せる。
・トロール
クリストフの友達。
序盤にて姉妹に放った「君たちがいるといつも問題が起こる」というセリフが的を射ており印象に残る。
・エルサとアナの両親
魔法の秘密を探しに行きそのまま亡くなった二人。
彼らの過去こそが本作における最重要ポイントとなる。
・ハンス
前作のヴィラン。
『エルサのサプライズ』にてギャグ的な登場をし、もはや威厳もなにもないかと思われたが、本作においても意外な形でエルサの前に立ちはだかる。
...ネタバレじゃないか、だって?はて、なんのことやら...
・サラマンダー
新キャラクター。いかにもツムツム化が似合いそうな火の精霊。
オラフにはなかったマスコット的可愛らしさが特徴。
・その他精霊の皆様
「ゲイル」と名付けられた風の精霊、恐ろしい土の精霊、エルサの行手を阻む水の精霊。
そして謎に包まれた「第五の精霊」の正体とは?
・サマンサ
...誰?
本編の内容としては、とにかくいろんな要素で鳥肌が立ちっぱなし。
氷の美しさはもちろんのこと、今回は「秋の景色」にも注目したいところ。さまざまに色づく木の葉についウットリ。
ストーリーの重さは変わらず、そしてより深く。 前作から「家族愛」というテーマを受け継ぎつつ、ただ謎を解明するだけでなく、人のつながりというものを深く考えさせられる内容でした。笑えるシーンもあるものの、悲しいシーンもそこそこあるので気が引けない。ただクリストフのソロ曲はシリアスなはずなのに笑ってしまう。
ディズニーお馴染みのミュージカル部分は、今作においてもレベルが高く、サウンドトラックも聞き応え抜群。ぶっちゃけ個人的には前作よりも好き。
単純に歌うキャラクターが増えたこともあり、バラエティは豊か。
冒頭の『ずっとかわらないもの』はオススメの一曲。メイン部分たる大冒険の前ではあるものの、ついこんな日常が続いて欲しいと思ってしまう。
まさしく「これが見たかった」という内容であり、大満足な映画でした。『アナと雪の女王』というシリーズに対しても、本作公開前までは「好きだけど特別ってわけでもない」ものだったのに、2を見てかなり大好きなシリーズになりました。
その弊害として、これ以降彼女たちの冒険を見ることができないだろう(=3はなさそう)という寂しさも。結末に納得いく分、虚無感が残ってしまった。いつものことだけど。(むしろ虚無感が残るからこそ、その作品を深く楽しむことができた証拠とも考えている)
結論として、前作を見た人は是非見てほしい作品。
続編でありがちな、活躍が残念なキャラクターや前作との空気感の違いはなく、不満はほとんどなし。監督の言う通り、2をもってアナ雪は完結し、ようやく一つの壮大な物語が出来上がるのです。
かつて社会現象を巻き起こすほどの大ヒットを見せた名作の結末を、是非劇場で、欲を言えばIMAXで見ていただきたいです。
そして、観賞後にはサウンドトラックを聴くことをオススメします。
幸いにもApple musicなど定額ストリーミングサービスでも配信されているので、本作の曲が少しでも気に入ったのなら抑えておきたいところ。
主題歌たる「into the unknown」の歌詞の味わい深さや、結末に向かうキャラクターたちの感情を思い出し、感動をいつまでも体感できます。
個人的には「into the unknown」は言語版エンドソングがオススメです。